第3期第3回:優秀作品


諸星友亮 cLOUDDEAD 『cLOUDDEAD』

 ドーズ・ワン、ホワイ?、オッド・ノスダムによる3人組の1st。まずなによりもこのジャケットは秀逸である。
http://www.discogs.com/viewimages?release=24561 (リンク先はジャケットの画像)  この紫がかった空の様なジャケットからどんな音を想像するだろうか。そして全く想像できないと思うが、意外にもこのアルバムはヒップホップのアルバムである。またさらに驚くべきことに、そのジャケットに適した様なヒップホップが鳴っている。この作品以前にもオルタナティヴなヒップホップつまり一般的なマッチョなイメージではないヒップホップはあった。でもそれらの多くは、別ジャンルから音楽的な要素を足した交配から生まれたものだ。それはマッシヴ・アタックにせよ、ベックにせよ、ジャングル・ブラザーズにせよだ。このアルバムはどうだろう。最初から最後までどこを切ってもヒップホップでしかない。しかしそれまでのヒップホップとは全く違うテクスチャーを獲得した。ヒップホップ純血の非ヒップホップといったところだろうか。そして当然こんな奇跡の様な作品は二度も作れるはずはなく、この後それなりのセカンドを残して解散。
 本当に最初聴いたとき魔法の様に思ったものだが、この作品の発表前後にリリースされたドーズ・ワン、オッド・ノスダムのソロを聴くと実はこの人達の好んで使うドローンやコラージュといった手法は現代音楽、実験音楽に由来していたことがわかる。でもこの作品を聴いただけでは、そんなことは全く感じられないという人が多いだろう。実際僕はわからなかった。そして本作を超えるようなヒップホップを探したが、結局見つからなかった。
 ゼロ年代は誰でも驚けるような音楽、つまり実験的であることとキャッチーであることを両立させられた音楽が本当に少なかったが、これはその数少ない例外の1つだろう。クリシェであることをわかっているけれど、ゼロ年代屈指の名盤だと思う。

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